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家族という特殊チームを解体しよう② 家を出る応援をする
この記事の担当 生きかたカエル

前回はこちら → ①暮らす自由が守られていない

・家を出たい子どもを応援するときには


家を出たい18歳未満に出会ったら、話を聞いたうえで、意思確認をしていきます。
家から出たい気持ちが強い場合には、本人の同意をもらい、児童相談所への相談のアシストをします。

どのように児童相談所に相談したらよいかを伝え、可能な場合は一緒に行くこともしますし、離れていたら、行く前に電話をして事情を伝えます。

そのうえで、相談後についてもプランをたてます。

つまり、一時保護を含めて、本当に家から出られるための先の方法を考え、用意するのです。

例えば、一時保護は児童相談所の中に保護所がありますが、空いていないこともあります。
その場合は、一時保護委託といって、自立援助ホームや児童養護施設、里親さんが一時保護を受け入れることができますので、受け入れ先を検討しておきます。

また、中学生や高校生などの年齢であれば、一時保護ではない形のサポートも考えられます。
児童相談所の理解をもらい、本人の意思と周囲の理解が合致すれば、親戚の家や友達の家や制度外の支援者の生活支援なども選択肢になるでしょう。

ただし、その場合は制度外なので、受け入れ先がどれだけ児童相談所の信用を得ることができるのかがポイントになりますし、本人の意見を前面に出すことも大切になります。
(その際は、児童福祉法の第二条に書かれている「意見の尊重」「子どもの最善の利益」を前面に出しながら、具体案を用意して交渉します)

・意思が尊重される経験の重要性


本人が家に帰りたくないのであれば、潜在化している性被害からのリスク回避の意味でも、長年の抑圧の被害の後遺症の可能性を考えても、すぐに気軽に出られるような仕組みがとても大切です。

それは、物理的に嫌なところから離れて少しは穏やかに過ごせるようにという意味もありますが、「こんなのイヤだ、助けて!」と発した時に、実際に助けてもらえるという経験になることの方がもっと大切です。

逆に言うと、「助けてって言ったのにダメだった」「嫌だと言ったのに我慢することになった」「自分の気持ちを言ったら余計ひどい目にあった」という経験をさせてはいけないということです。

それが、現実はほんと逆なことが多いのが悲しいところです。

だから、助けを求めた経験が次に助けを求めることを後押しするのではなく、ためらわせる要因になってしまいます。

・警察や弁護士さんの力を借りる


また、未成年の場合は児童相談所と同時に警察にも先に相談に行きます。

事情を話して、保護者が強硬策に出た時に介入してもらえるようにします。

この時にも説明の仕方が重要です。
そして、どんな警察官にあたるかも重要です。
(悲しいことに)人には当たり外れがあるので、外れたと思ったら、別の人にあたるなどできる努力をします。

そのあたりに不安がある際には、弁護士さんを味方につけます。

警察との交渉も手伝ってくれますし、代理人になってもらい、保護者からの連絡を代わりに間に入って引き受けてもらうこともできます。

そうやって家族から離れること、追いかけられて、連れ戻されないような手立てをとります。

<続く> → ③家族から抜ける手続き

update 2024/1/17
家族という特殊チームを解体しよう① 暮らす自由が守られていない
この記事の担当 生きかたカエル

・家族は特殊チーム


どこで暮らすのか、誰と暮らすのか、どう生きるのか…それらは本来、(著しく社会的に逸脱していない限りは)自分で自由に決めていいはずです。
でも、家族という特殊なチームにおいては、その自由が保障されないことがよくあります。

カエル的には、家族の治外法権と呼びたいと思うほどです。
(ちなみに、学校も治外法権だと思っています。だって、校則は基本、憲法違反だと思うんですよね…それは機会があったらその時にでも)

実際のところ、家族においては、お金や力を持つチームメンバーが、チーム全体の生き方や決定を握り、民主主義や法治国家の原則から外れてしまうことが当たり前に起こります。
とくに、子ども、女性、障がいのある人などが自由を奪われる側になることが多いです。

しかし、それは単純に「自由を奪う側の人間に問題がある」と批判すればいい問題ではありません。
今の社会全体の力関係や権力の構造が、力の強い者の在り方に弱い側がコントロールされる要素を、多く含んでいるのです。

人間関係に力関係はつきものなので、狭く固定化したコミュニティで何かしらの問題が起こることまでは仕方ないとしても、それを嫌だと思った時にそこから抜けられる自由が保障されるべきだと思っています。

・家出ではなく、暮らす自由を保障する


「家から出たい」という願いはいたって健康的な選択だと思いますし、まっとうな希望だと思いますし、ぜいたくでもないし、当然だとカエルは思います
家以外のところで暮らしたいと願う人に出会ったら、権利の保障として、必要なお手伝いもしてきました。

しかし、世の中には、その健康的な選択を応援する仕組みや手立ては、なかなか見当たりません。
逆に、それを阻むことの多さにうんざりしてしまいます。

とくに未成年は深刻です。

具体的にイメージしてみましょう。
未成年は、家から出ると捜索願が出され、警察にすぐに探されます。あっという間に居場所がばれます。追いかけられ、連れ戻されます。(親が無関心の場合は除く)

18歳未満だったら、児童相談所に駆け込む方法がありますが、保護者が謝ったり、反省しているふりをしたりと大人の対応をすれば、たしなめられ、帰るように諭されることもしばしばです。
実際にそうして連れ戻されて、絶望した話はよく聞きます。

だからカエルは、家を出たい18歳未満に出会ったら、本人の同意をもらい、児童相談所への相談のアシストをします。

記事が長くなってしまうので、具体的な方法は、次回詳しく説明します。(このシリーズは全4回です)

続き → ②家を出る応援をする

update 2024/1/17
家族に代わるものを考えてみた
この記事の担当 生きかたカエル

生きづらい人と関わっていると、生きづらさに家族のことが影響している場合がとても多いとカエルは感じています。

なので今回は、家族とは何か?を整理して、家族に代わるものを考えてみました。

・「家族」を考える前に「つながり」について考えてみよう

人は、一人では生きられません。社会の中でいろいろな人や組織、物事とつながって生きています。そのつながりの量と質が、その人の生活と人生に大きな影響を与えます。

人が穏やかに生活するために必要な「つながり」を整理すると、以下のようになります。

・右半分の「生活を支える機能」に注目

この図の右側に注目してください。経済基盤(お金)と生活基盤(衣食住)と生活支援(日々の心身のケア)という「くらし」に関係するつながりは「家族頼み、家族ありき」なのが、日本社会の特徴と言えます。

具体的には、法律や制度で言うと民法877条には扶養義務があり、生活保護を受ける際には扶養照会があったりしますし、価値観の面では「家族だから」「家族なのに」「家族らしく」などという呪縛がたくさんあります。

この構造では、家族に経済力や生活力、ケア機能がある程度整っていれば子どもが健やかに育ったり、安心して生活したり、支え合うことができます。でも反対に、経済力や生活力、ケアの機能がなければ、家族の中でも弱い立場(子どもや女性など)に搾取やしわ寄せがいき、人権侵害が起こってしまうという、致命的な悲劇を生み出してしまいます。

これは言い換えると「家族ガチャ」で人生が大きく決まってしまう理不尽な仕組みが前提としてあることを意味します。

・福祉や支援の役割

だから、今考えるべきは「家族頼み、家族ありき」の右半分をいかにして家族から切り離し、個人に保障するかです。経済的な基盤を保障する最後の砦の生活保護が「世帯」対象になっているため、本当の意味で必要な人に届かない現実がたくさんあります。

それ以外の経済的な保障は期限や条件があったりして、不十分です。そして、衣食住の保障も生活保護と重なり、他の選択肢がありません。また、日常生活における心身のケアは障がいの認定を受けられれば、一部の人が使うこともできますが、うまくつながる人はほんの一部で、対象外となる人、制度にめぐり合わない人もたくさんいます。

お金の心配をせず、衣食住が保障され、不安や困ったことを一緒に考え、必要あるときに付き添ってくれる人がパッケージになって必要な人に届けられたらどれだけの人が救われるのかと常々思います。

・自立援助ホームを拡大してみたら

ただ、今の制度でもこうしたことを想定してサポートしている事業はいくつかあります。

例えば児童福祉法の事業である「自立援助ホーム」生活するための居住スペース、食事の提供、仕事をするためのいろいろなサポート、相談や日常生活における必要なケアがセットで提供されます。利用料は月3万円が基本ですが、学生や病気や障がいで稼ぐことが難しい場合は5万円ほどの生活費が支給されるので、利用料と最低限生活に必要な経費はまかなうことができます。

しかし、年齢の期限があるため一定の年齢に達すると支えがなくなってしまいます。

実際には、自立援助ホームで暮らす若者たちはまさに日本家族が抱える致命的な欠陥構造によってたくさんのダメージを受けたり、成長を疎外されているため、20歳になったらすぐに一人で生きていけるような状況になるわけではありません。また、20歳を過ぎてから自立が難しいことに気付いたり、ようやく家から離れようと思った人は自立援助ホームを使えません。

だったら、自立援助ホームの対象者を今の原則15歳から20歳までの家庭のサポートが難しい若者たちから、子ども時代に家庭からのサポートが受けられなかったことによって自立することが難しい人(年齢制限なし)に変えるだけで、かなりの課題が解決するのではないかと考えています。

update 2023/10/19